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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

RoHS指令 附属書IIIの改正動向

執筆者の写真: tkk-labtkk-lab

2025年03月07日更新

RoHS指令(2011/65/EU)の附属書III(適用除外用途)の項目6x、7x(鉛関係)の適用範囲と期限の動向が気になるところかと思います。1月6日に合計3件の鉛関係の指令案がWTO通報されました1)2)3)。以降、その主な内容を説明します。なお、今回のコラムはWTO通報の内容に関する動向であり、附属書III項目6x、7xの改正(案)内容は別のコラムで説明します。


1.経緯

RoHS指令(2011/65/EU)は2011年7月21日に発効し、その際に附属書III項目6a、7a、7cなどの適用除外用途の期限が規定されていました。それらの延長申請に対しPack 22で検討され、その報告書4)は2022年2月15日付けで発行されました。その後、内容に対して反対意見が提出され、その反対意見が妥当であるかをPack 27で検討することになりました。そのPack 27の報告書5)は2024年5月30日付けで発行されました。その後、欧州委員会で検討が続けられ、次節に示す合計3件の草案が1月6日にWTO通報されました。これらの草案への意見提出期限は通知から60日後とされ、採択予定日である3月7日となっています。


現状では、附属書III項目6(a)を例にとると、有効期限は、カテゴリー8の体外診断用(IVD)医療機器については2023年7月21日、カテゴリー9の工業用監視制御機器(IMCI)およびカテゴリー11の「他のカテゴリーに含まれないその他のEEE」(その他のEEE)については2024年7月21日となっており、既に有効期限は過ぎており、ステータスは「Valid - requested for renewal」となっています。しかし、RoHS指令第5条(5)項に従い、欧州委員会が更新申請に関する決定を下すまで、既存の免除措置は有効とされています。この項目6(a)に関して欧州委員会の決定としては、「鋼材中の鉛の代替に十分な時間を提供し、代替の便益を上回る負の影響を回避するため、RoHS指令第5条(2)項第に従い、延長申請に対して短期間の有効期間を認めることが適切である。RoHS指令附属書IIIの6(a)、6(a)-I及び6(a)-IIに関しては、当該指令の附属書Iに記載されているすべてのカテゴリーに1つの有効期限を設定することが適切である。」とされています。ただし、「RoHS指令附属書IIIの6(a)に定める免除は、同指令の第5条(6)に従い、更新申請に関する決定の日から12ヶ月後に失効すべきである。」とされています。そもそも、新しい有効期限を決定する際には、18ヶ月の更新申請期間が考慮され、期限内に更新申請が提出されなかった免除は、第5条または指令の関連する付属書で指定された日に失効するとされています。したがって、“I”や“II”などの枝番号が付いていない項目6(a)に関しては、そのタイムスケジュールに合わないため、実質的に有効期限終了となると考えられます。


2. 草案の内容

この草案である委員会委任指令案は、「RoHS指令の物質規制からの特定かつ一時的な免除申請に関するものである。更新を認める基準はほぼ満たされており、附属書IIIの下で免除を更新することが提案されている。」とあり、RoHS指令附属書III項目6x、7xの鉛関係の適用除外で、科学的背景研究としてPack 22、Pack 27で検討された内容の一部の項目に関するものです。

1) G/TBT/N/EU/1102 高融点はんだ中の鉛の免除に関する欧州議会および理事会の指令2011/65/EUを改正する委員会委任指令草案1)

2) G/TBT/N/EU/1104 鋼、アルミニウム、銅の合金元素としての鉛の免除に関する欧州議会および理事会の指令2011/65/EUを改正する委員会委任指令草案2)

3)G/TBT/N/EU/1103 欧州議会および理事会の指令2011/65/EUを改正する委員会委任指令草案(ガラスまたはセラミック部品中の鉛の免除に関するもの)3)

これらの草案の目的は、RoHS指令第1条の目的を損なうことなくイノベーションを可能にするため、科学的・技術的進歩に合わせた附属書の適応、人の健康又は安全の保護、環境の保護とされています。

関連文書としてPack 22、Pack 27の報告書4)、5)が示されています。


3. 今後の予想スケジュール

「Exemptions Timeframe(免除の時間枠)」6)に示されている標準的な流れを参照して、今後予想されるスケジュールを示します。

1) WTO通知、意見募集

1月6日~3月7日:60日(約2ヶ月)

2) 欧州議会と理事会の精査

約2ヶ月

3) 官報掲載

EU官報への掲載から20日後がthe date of the decision:決定日(委任指令発効日)

4) 加盟国の法整備(必要な国内法を採択して公表)

・決定日から6ヶ月後の末日まで

・決定日から6ヶ月後の末日+1日から、これらの規定を適用する。

以上の流れを、あくまで単純に日数を加算した場合、加盟国の国内法が採択されるのは2025年11月末頃になると予想されます。


なお、Pack 22の状況(2024年2月)として、「Pack 22の免除申請について最終決定を下すには、同じ免除エントリの申請が部分的にカバーされているため、Pack 27 に基づく評価を完了する必要がある。その後、委員会は法案を作成するが、これも公開協議の対象となる。」と表示されています。それを受けて、今回のWTO通報の後日、欧州委員会でもパブリックコメントを募集しています。その内容は別のコラムとして掲載します。


引用

1) G/TBT/N/EU/1102

2) G/TBT/N/EU/1104

3)G/TBT/N/EU/1103

4)Pack 22

5)Pack 27

6) Exemptions Timeframe


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