2023年03月17日更新
欧州委員会は、WEEE指令(2012/19/EU)の修正案を公開し、意見募集を開始しました1)。以降、修正案の主な内容を説明します。
1.修正案の経緯
2022年1月25日、欧州連合司法裁判所は、WEEE指令の13条1項が、2005年8月13日から2012年8月13日までに上市された太陽光発電パネルに限り無効と判断しました。 この2012年8月13日の日付は、現在のWEEE指令の発効日です。 現在のWEEE指令の発効により、太陽光発電パネルが適用範囲に追加されました。 さらにオープンスコープ(一部を除き、原則的に全ての電気電子機器が対象)(以降:オープンスコープEEE)の考え方が導入され、2018年8月15日から実施されています。
現在のWEEE指令の13条1項は、以下のような内容となっています。
「加盟国は、2005年8月13日以降に上市された製品から生じた、一般家庭以外からのWEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄に要する費用の財源を、生産者が負担することを保証するものとする。
廃棄物が新しい同等製品または同じ機能を果たす新製品に置き換えられる場合、その費用の財源は、それらの製品を供給する生産者が提供するものとする。加盟国は、代替案として、一般家庭以外の利用者にも、この資金調達の一部または全部を負担させることを規定してもよい。
その他の廃棄物については、費用の財源は、一般家庭以外の利用者が負担しなければならない。」
欧州連合司法裁判所はWEEE指令の採択以前は、廃棄物処理に関する指令(以降:廃棄物指令)(2008/98/EC) 2)の第14条に基づいて、太陽光発電パネルの廃棄物の管理に関連する費用を現在又は過去の廃棄物保有者、あるいは太陽光発電パネルの生産者又は販売者に負担させるという選択が加盟国にあったと判断しました。 欧州連合司法裁判所によれば、WEEE指令の第13条1項において、一般家庭用以外の太陽光発電パネルの使用済み処理に関する費用の調達は、廃棄物指令が施行されていた時期に製品が既に上市されていた場合を含め、全ての加盟国で生産者が負担しなければならないという規定は、過去にさかのぼって適用されるとみなさなければならないとしています。 従って、廃棄物指令とWEEE指令の両方が適用されてしまい、法的確実性の原則を侵害しかねないと判断しました。 つまり、2005年8月13日から2012年8月13日までに上市された太陽光発電パネルに関して、WEEE指令は無効と判断されました。
2.修正案の内容
本修正案による条文の修正内容として、第13条第1項を中心に関連する第12条と、参照規格の改版にともなう修正であり、以下に説明します。
(1)第12条第1項
本修正案は、太陽光発電パネルおよび一般家庭向けオープンスコープEEEの生産者が、一般家庭からのWEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄に要する費用の調達を行うべき時期を明確化しています。 特に、2012年8月13日以降に上市された太陽光発電パネルの生産者は、太陽光発電パネルに起因するWEEEを回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄のための資金を提供することを規定しています。 また、2018年8月15日以降に上市されたオープンスコープEEEの生産者は、一般家庭からのWEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄のための資金を提供することを規定しています。
(2)第12条第3項
本修正案は、欧州連合司法裁判所の判決で2005年8月13日への言及が無効となることにより、「2005年8月13日より後に上市された製品について」の記載を削除するとしています。
(3)第12条第4項
本修正案は、本項はWEEE指令第2条第1項(a)に言及された製品のWEEEのみ(太陽光発電パネル除く)に適用されることを規定しています。
(4)第13条第1項
本修正案は、太陽光発電パネルおよび2018年8月15日からWEEE指令の適用範囲に入る一般家庭向け以外のオープンスコープEEEの生産者が、WEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄のための資金を提供すべき時期を規定しています。 特に、一般家庭向け以外の太陽光発電パネルの生産者が、2012年8月13日以降に太陽光発電パネルを上市している場合、少なくとも太陽光発電パネルから生じるWEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄のための資金を提供することを規定しています。 また、一般家庭向け以外のオープンスコープEEEの生産者は、2018年8月15日以降に上市されたEEEから生じるWEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄のための資金を提供することを規定しています。
(5)第14条第4項
本修正案は、WEEE指令における参照規格である欧州規格EN50419が2022年に改訂されたため、2006年版の規格への参照を2022年の更新版へと置き換えるものです。
(6)第15条第2項
本修正案は、第12条と第13条の改正に伴うもので、EEEにマークを付ける生産者の義務は、太陽光発電パネルに関しては2012年8月13日から、オープンスコープEEEに関しては2018年8月15日からのみ適用されることを明確化しています。 欧州規格EN50419の適用についても規定しています。
3.修正案の条文
本修正案に記載されている条文の修正箇所は、以下の通りです。
(1)第12条を次のとおり修正する。
(a)第1項を次のように修正する。
加盟国は、第5条2項に基づき設置された回収施設に、一般家庭からのWEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄のための資金を、以下に従って生産者が提供することを保証するものとする。
(a)第2条第1項(a)に規定されるEEEのうち、太陽電池パネル以外のEEEから生じたWEEEについて、当該EEEが2005年8月13日以降に上市されたものである場合。
(b) 2012年8月13日以降に上市された太陽電池パネルに起因するWEEE。
(c) 第2条第1項(b)に規定されるEEEから生じたWEEEで、第2条第1項(a)の範囲に含まれず、当該EEEが2018年8月15日以降に上市されたものである場合。
(b)第3項第1号を次のように修正する。
生産者は、自社製品から生じたWEEEに関する第1項に規定された業務に資金を提供する責任を負うものとする。生産者はこの義務を自社独自で、または業界団体に参加することによって果たすことを選択できる。
(c)第4項を次のように修正する。
2005年8月13日以前に上市された太陽光パネル以外の第2条第1号(a)に規定された製品から生じたWEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄のための業務に、それぞれの費用が発生した時点で市場に存在するすべての生産者が資金を提供する責任を負うものとする。生産者はこの義務を自社独自で、または業界団体に参加することによって果たすことを選択できる。
(2) 第 13 条第 1 項を次のように修正する。
加盟国は、一般家庭以外からのWEEEの回収、処理、再生および環境に配慮した廃棄のための資金を、以下に従って生産者が提供することを保証するものとする。
(a)第2条第1項(a)に規定されるEEEのうち、太陽電池パネル以外のEEEから生じたWEEEについて、当該EEEが2005年8月13日以降に上市されたものである場合。
(b) 2012年8月13日以降に上市された太陽電池パネルに起因するWEEE。
(c) 第2条第1項(b)に規定されるEEEから生じたWEEEで、第2条第1項(a)の範囲に含まれず、当該EEEが2018年8月15日以降に上市されたものである場合。
(3)第14条第4項を次のように修正する。
WEEEを未分別の自治体廃棄物として処分することを最小限に抑え、分別収集を容易にするために、加盟国は生産者が上市するEEEに付属書IXに示されるシンボルを適切にマーキングすることを保証しなければならない。これは欧州規格EN50419:2022に準拠することが望ましい。例外的に、製品のサイズや機能のために必要な場合は、そのシンボルを包装、使用説明書およびEEEの保証書に印刷するものとする。
(4)第15条第2項を次のように修正する。
EEEが上市された日を明確に決定できるようにするため、加盟国はEEEに貼られたラベルが2005年8月13日以降に上市されたことを明記することを保証するものとする。可能であれば、欧州規格EN50419:2022を適用するものとする。
太陽電池パネルについては、2012 年8月13日以降に上市されたものにのみ、第1項の義務が適用されるものとする。
第2条第1項(b)に規定され、第2条第1項(a)の範囲に含まれないEEEについては、第1項の義務は2018年8月15日以降に上市されたEEEにのみ適用されるものとする。
3.修正案の今後の予定
意見募集期間は、2月7日から4月4日とされています。引用1)のURLからログインし、意見を述べることができます。寄せられた意見は、本案の最終決定に際して考慮されます。また、寄せられた意見は本サイトで公開されることになっています。
(中山 政明)
引用
1) WEEE指令改定案の意見募集
2)廃棄物指令
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