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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

RoHS指令の各種ランプの水銀に関する附属書IIIの改正

2022年02月28日修正

欧州委員会はRoHS指令附属書III(第4条(1)の制限から適用除外される用途)について、1~4項の改正に関する2021/12/13付け欧州委員会委任指令を官報公示しました。官報公示の20日後(2022/1/2)に発効するとされています。


今回の改正は、11品目(項番号グループ)の各種ランプの水銀に関するものです。


以降、項番号グループ毎に各改正内容を説明し、今回の改正の注目点を説明します。


1. 改正の内容


(1)4(a)、4(a)-I項:その他の低圧放電ランプ中の水銀1)

現在、ランプのスペクトル出力の主な範囲が紫外線スペクトルであることが要求される場合の低圧非蛍光体コーティング放電ランプ中の水銀が1ランプあたり15mgまで適用除外としています。 この適用除外の更新申請は2件あり、所定のプロセスで審議されました。このランプは、工業用、商業用、住宅用の機器に取り付けられ、空気/水/表面の紫外線殺菌やバクテリアの消毒や浄化などの用途に使用されています。 その機能を果たすためには、光出力が深紫外域である必要があり、水銀を含まない代替品はまだ必要な波長域が出せず、技術的に不可能であり、代替品を開発するためにはまだ時間が必要であると結論付けられました。 そのため、5年間の免除期間を更新するとされました。


(2) 4(c)、4(c)-I、4(c)-II、4(c)-III:その他の一般照明用の高圧ナトリウム (蒸気) ランプ(以下:HPSランプ)中の水銀2)

現在、一般照明目的の他のHPSランプにおける水銀の使用を、4(c)-I:155W以下:25mg、4(c)-II:155W超405W以下:30mg、4(c)-III:405W超:40mgまで適用除外としています。 この適用除外の更新申請は1件あり、所定のプロセスで審議されました。 このランプは、発光ダイオード(LED)照明器具で代替可能ですが、既存のHPSランプの交換部品としては互換性がありません。 そのため、HPSランプを早期に廃止すると、既存のHPS照明器具が早期に寿命を迎え、全体的に環境に悪影響を及ぼす可能性があり、また、十分な代替品を開発するためにはまだ時間が必要であると結論づけられました。 そのため、5年間の免除期間を更新するとされました。


(3) 2(b)(4)-I、2(b)(4)-II、2(b)(4)-III:その他の一般照明用および特殊用途の蛍光ランプ中の水銀3)

 現在、その他の一般照明用および特殊用途の蛍光ランプ中の水銀の使用を、2(b)(4)-I:その他の一般照明および特殊用途のランプ(例:無電極ランプ):15mg、2(b)(4)-II:主に紫外線スペクトルの光を発するランプ:15mg、2(b)(4)-III:非常用ランプ:15mgまで適用除外としています。 この適用除外の更新申請は1件あり、所定のプロセスで審議されました。 このランプは、形状、長さ、スペクトルなど、互換性を保つのが容易でないため、発光ダイオード(LED)の代替品と容易に交換することはできないと結論づけられました。 そのため、2(b)(4)-Iと2(b)(4)-IIIは5年間、2(b)(4)-IIは3年間の免除期間を更新するとされました。


(4) 4(e):クォーツメタルハライド(以下:MH) ランプ中の水銀4)

現在、MHランプでの水銀の使用を適用除外としています。 この適用除外の更新申請は1件あり、所定のプロセスで審議されました。 MHランプにおいて水銀以外の代替物質が現在ではないことや、MHランプに含まれる水銀の量を減らすことは、ランプの機能・性能に影響を与え、ランプの寿命にも影響を与える可能性があり、現時点では、当該用途において水銀を代替することは技術的に不可能であると結論づけられました。 そのため、5年間の免除期間を更新するとされました。


(5) 1(g):一般照明用で寿命が20,000時間以上の30W未満の片口金 (コンパクト形) 蛍光ランプ(以下:CFL)中の水銀5)

現在、CFLにおける水銀の使用を、1(g) 一般照明目的で30W未満、20,000時間以上の寿命を持つものを3.5mgまで適用除外としています。 この適用除外の更新申請は1件あり、所定のプロセスで審議されました。 CFLはLEDの代替品があることや、代替品により水銀の放出を防ぎ、同時に照明に消費されるエネルギーを削減することをシミュレーションデータが示していることなどから、いずれの適用除外基準も満たされないと結論づけられました。 そのため、18ヶ月後に免除期間は終了するとされました。


(6) 1(f)-I、(f)-II:特殊用途の片口金 (コンパクト形) 蛍光ランプ(以下:CFL)中の水銀6)

現在、CFLにおける水銀の使用を、1(f)-I:主に紫外線スペクトルの光を放出するよう設計されたランプ:5mg、1(f)-II:特別な目的のランプ:5 mgまで適用除外としています。 この適用除外の更新申請は2件あり、所定のプロセスで審議されました。 紫外線スペクトルを放射するように設計された特殊用途の CFLについては、当該用途での水銀の代替が技術的に不可能であると結論づけられました。 そのため、5年間の免除期間を更新するとされました。 その他の特殊用途の CFLについては、関係する広範な用途における水銀の代替に関する情報が不足しているため、3年間の免除期間を更新するとされました。


(7) 3(a)、3(b)、3(c):特殊用途の冷陰極蛍光ランプ (以下:CCFL) および外部電極蛍光ランプ (以下:EEFL) 中の水銀7)

現在、CCFLおよびEEFLに含まれる水銀は、3(a):短尺(500mm以下):3.5mg、3(b):中型の長さ(500mm超1,500mm以下):5mg、3(c):長尺(1,500mm以上):13mgまで適用除外としています。この適用除外の更新申請は1件あり、所定のプロセスで審議されました。

このランプは、LEDの代替品が入手可能であり、今後新規発売されるランプと置き換えが進んでいます。 しかし、元々CCFLやEEFLで設計された機器の修理用途としては、LEDを代替品として使用することは現実的ではなく、修理用途としては免除を更新すべきであると結論づけられました。 CCFLやEEFLの寿命は非常に長いため、3年間の免除期間を更新するとされました。


(8)1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e):一般照明用の片口金 (コンパクト形) 蛍光ランプ(以下:CFL)中の水銀8)

現在、一般照明目的のCFLにおける水銀の使用を、1(a):30W未満:2.5mg、1(b):30W以上50W未満:3.5mg、1(c):50W以上150W未満合:5mg、1(d):150W以上:15mg、1(e):構造上の形状が円形または正方形で管径が17mm以下:7mgまで適用除外としています。 この適用除外の更新申請は2件あり、所定のプロセスで審議されました。これらCFLについて、利害関係者との協議を含む科学技術評価でいずれの適用除外基準も満たされないことが示されました。 特に水銀を含まない代替品がすでに入手可能であると結論づけられています。 さらに、水銀を代替することにより環境、健康、消費者安全の面でも全体的な利益が得られると結論づけられました。 そのため、12ヶ月後に免除期間は終了するとされました。


(9) 4(b)、4(b)-I、4(b)-II、4(b)-III:平均演色評価数が60を超えるように改善された一般照明用の高圧ナトリウム (蒸気) ランプ(以下:HPSランプ)中の水銀9)

現在、HPSランプに含まれる水銀で、4(b):平均演色評価数Ra>80、105W以下のHPSランプにおいて:16mg以下、平均演色評価数Ra>60のHPSランプにおいて、4(b)-I: 155 W未満:30 mg、4(b)-II:155 W以上405 W未満:40 mg、4(b)-III:405 W以上: 40 mgまで適用除外としています。 この適用除外の更新申請は1件あり、所定のプロセスで審議されました。 4(b)のHPSランプの代替品候補ではスペクトルの赤色が発光できていないため代替は不可能であり、5年間の免除期間を更新するとされました。 4(b)-Iは部分的に修正して、4(b)として5年免除するとされました。 4(b)-IIのHPSランプは水銀を含まないLEDランプの代替品があること、4(b)-IIIのHPSランプはもはやメーカーが出荷していないことから、いずれの適用除外基準も満たされないと結論づけられました。そのため、12ヶ月後に免除期間は終了するとされました。


(10) 2(b)(3):非直管の3波長形蛍光ランプ中の水銀10)

現在、管径が17mm以上の非線形三波長蛍光体ランプ(例:T9)において15mgの水銀の使用を適用除外としています。 この適用除外の更新申請は4件あり、所定のプロセスで審議されました。 代替品(発光ダイオード(LED)照明器具)は利用可能ですが、部品レベルでの代替品(交換用LED)の範囲と既存の設備との互換性は、寸法と電気的互換性の点でまだ検証されておらず、十分な互換性のある代替品を開発するためにはさらに時間が必要であるとされました。 しかし、段階的な水銀含有量制限の削減は技術的にはすでに可能であると結論づけられました。 そのため、12ヶ月後に15mgの免除期間は終了するとされ、3年後までは10mgを免除するとされました。


(11) 4(f)-I、4(f)-II、4(f)-III、4(f)-IV:特殊用途のその他の放電ランプ中の水銀11)

現在、4(f)-I:本附属書で特に言及されていない特別な目的のためのその他の放電ランプに含まれる水銀、4(f)-II:2,000ルーメンANSI以上の出力が要求されるプロジェクターに使用される高圧水銀ランプに含まれる水銀、4(f)-III:園芸用照明に使用される高圧ナトリウムランプに含まれる水銀、4(f)-IV:紫外スペクトルの光を発するランプに含まれる水銀の使用を、それぞれ適用除外としています。この適用除外の更新申請は3件あり、所定のプロセスで審議されました。 4(f)-Iのランプは、代替の見込みを考慮して免除を制限するために、免除の現在の広範な部分は、3年の短い期間で更新されるべきであると結論づけられました。 4(f)-II、4(f)-III、4(f)-IVについては、代替品には様々な制限があり、特殊な目的のために多数の種類の既存の放電ランプに使用することはできないと結論づけられました。 そのため、5年間の免除期間を更新するとされました。


2. 改正後の対応

今回の改正で、1(g)、1(a)、1(b)、1(c)、1(d)、1(e)、4(b)-II、4(b)-IIIは、免除期間の更新がされなかったため、対応が必要となります。 また、2(b)(3)は段階的削減となっており、対応が必要となります。

免除期間が更新された項目に対しては、「加盟国は遅くとも(本指令の発効日から)6ヶ月後までに、必要な法律、規制及び行政規定を採択し公表しなければならない」とされており、各国で法整備が進むものと考えられます。

このような適用除外が廃止されることにより、以下のような効果が生じることが報告されています。12)

・約2,800kgの水銀が削減され、水銀を含むランプの不適切な廃棄や使用に伴うリスクも大幅に減少する。

・水銀を含むランプの段階的な廃止はエネルギーの消費を抑制するため、全体として温室効果ガス排出量の削減につながる。



(中山 政明)


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