2022年10月21日更新
【質問】
EU RoHS (I)指令に準拠した電気製品を引き取り修理することになりました。 修理品はRoHS(II)指令に適合させてCEマーキングの対応をしなくてはならないのでしょうか。
【回答】
ご質問の件、2006年7月1日以前に上市された電気製品の交換部品など上市時期や用途によっては、修理時点での基準は適用されません。 また、修理の内容が設計段階で想定された用途、性能範囲、メンテナンスの範囲内と判断される場合には、新たなCEマーキングの対応は不要となります。
基本的にはRoHS(II)指令第4条で、附属書IIに収載された物質をEEEへ含有させないと定めていますが、同条4,5,6項で適用の特例が定められています1)。 例えば、i) 4項で、2006年7月1日以前に上市されたEEEの修理用ケーブルや交換部品の場合、ii) 5項で、2006年7月1日以前に上市されたEEEから管理されたルートで回収され2016年7月1日以前に上市されたEEEに使用される交換部品の場合には、修理される時点での基準は適用されないとしています。 また、6項で附属書IIIおよびIVに収載された用途の場合も適用されないとしています。
また、RoHS(II)指令第7条で、製造者に対して,特定有害物質の使用制限要求に対する適合性をCEマーキングにて確実に証明することを求めています1)。 設計や整合規格等の変更に適切に対応して、製品の適合性の維持と管理を継続することを求めています。
CEマーキングに関するガイドとして、The ‘Blue Guide’ on the implementation of EU product rules 2022(EU製品規則2022の実施に関するブルーガイド(以下ブルーガイド)2))があります。 ブルーガイドの2.1項Product coverage(製品の適用範囲)に解説があります。 The product scope in Union harmonisation legislation(EU整合法令の範囲)・・Software(ソフトウェア)の3つの小項目で説明されています。
修理や改造に関しては、その1つの小項目であるRepairs and modifications to products(製品の修理及び改造)に、次の解説があります。
使用開始後に以下の重要な変更またはオーバーホールが行われた製品は、製品が復旧した(または、適用法令の適用範囲に入った)際に、新製品とみなさなければならない。
i) 当初の性能、目的又は型式が、当初のリスクアセスメントの想定外に変更された場合
ii) 危険有害性が変化した、または法改正により関連するリスクのレベルが上昇した場合
一方、設計段階で想定された用途、性能範囲、メンテナンスの範囲内で製品を修理した場合には、その製品を新製品とみなさず再度適合性評価を行う必要はないとしています。
不具合もしくは摩耗した部品を、元の部品と同じか類似したスペアパーツとの交換や、カード、コンポーネント、サブアセンブリーの交換によって、修理作業は行われます。
修理に使用される部品が技術進歩により性能が向上したり、古い部品の生産中止で代替品の使用により、元の製品の性能が変わることがあります。 この製品の性能変更が、設計段階で想定した用途や性能範囲内の保守であれば、この修理した製品は新製品とみなさないとしています。
なお、「ソフトウェア」の項において、ソフトウェアの更新又は修理も、物理的な修理や改造と同様に扱うと解説しています。 従って、ソフトウェアの更新による製品の性能変更が、設計段階で想定した用途や性能範囲内の保守であれば、製品は新製品とはみなさないとしています。
ご質問のケースですが、修理の内容について、設計段階で想定された用途、性能範囲、メンテナンスの範囲内であるか精査されることが重要です。 範囲内と判断された場合には、CEマーキング等の対応は不要となります。
なお、設計段階での想定の範囲外、すなわち改造に該当すると判断した場合には、関係法律が定める適切な適合性評価を行い、技術文書の準備、EU適合宣言書作成およびCEマークの貼付の検討を行う必要があります。QA601に改造の場合の解説があります3)。
1)RoHS(II)指令
2)ブルーガイド2022
3)製品改造した場合のCEマーキング
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