2022年08月13日更新
【質問】
タイにパソコンのアクセサリ用品を輸出することになりました。 タイRoHSの対応方法を教えてください。
【回答】
タイRoHS法への対応は、法的な義務ではありませんが、推奨されていて、認証を取得すればTISマークを製品に表示できます。 そのためには、タイRoHS法を理解し、規格適合証明を行い、認証を取得し、認証マークを表示しなければなりません。 以下、順を追って解説します。
1. タイRoHS法
いわゆるタイRoHS法は、タイ工業規格TIS 2368「有害物質を含む可能性がある電気・電子機器:特定の有害物質の使用制限」に規定されています。最初の版は、2009年2月2日に発効したTIS 2368-2551でした。 その後、EUでの改正RoHS指令(RoHS2指令)に準拠するために昨年改定されました。 現在は、TIS 2368-2564 1) が2021年9月8日に公布され、公布120日後の2022年1月6日から発効しています。 なお、規格番号の後ろにハイフンで連なる数字は、タイの仏歴年で西暦+543年です。
タイRoHS法は、EUやその他の諸国のRoHS関連法が必ず対応しなければならない「法律」や「強制基準」であるのと違い、任意の推奨基準であることが特徴です。 日本のJISマークに相当するTIS認証マーク 2)3)4) を表示できますが、赤い丸型の強制認証マークではなく、青い菱形の任意認証マークの表示になります。
2. タイRoHS法の改正点
2021年の改正で変更になった点を確認しましょう。基本的にはEU RoHS指令のRoHS2指令への改正やその後の制限対象物質の追加等の内容に追従しています。
①参照規格が更新されました。
タイRoHS法は、前文で欧州の3つの文書を参照しています。
・EU WEEE(Ⅱ)指令 DIRECTIVE 2012/19/EU
・EU RoHS2指令 DIRECTIVE 2011/65/EU
・RoHS指令規制物質分析関連の公定法 IEC 62321(all part)
②適用範囲
附属書Aに指定された電気・電子機器が対象です。
・これまでの附属書に11番目「上記以外の電気・電子機器」が加わり、実質的に総ての電気・電子機器(定格電圧が交流1000V以下、直流1500V以下)が対象になりました。(第1.1条)
・ただし、軍需品・軍需物資や宇宙機器、大型産業機器など10項目の電気・電子機器には適用しません。(第1.2条)
・旧基準の附属書Aに29項目あった免除品目が、新基準では附属書Bに移り、42大項目に増えました。(第3.2条)
③対象の有害物質
従来の6成分(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭素化ビフェニル(PBB)、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE))に加えて、フタル酸エステル類4成分(ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DEHP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジイソブチルタレート(DIBP))が加わりました。(第3.1条)
3.タイRoHS法の改正で変わらなかった点
つぎに変わらなかった点を確認します。
①任意の推奨基準であり、義務ではありません。
第4条「法令順守」に「ガイドラインの使用を推奨する」とされ「しなければならない」という文言ではありません。
②適合宣言書に必要な文書内容
附属書Cに、適合性を確認するための文書に必要な内容が列記されています。
4.タイRoHS法の規格適合証明宣言
適合宣言のためには、以下の書類を作成します。
・有害10成分が均質材料の検査で制限を超えない工業製品を、生産できることを示す技術文書
・システムの実装の有効性と効率性を確認する文書化された証拠
そのために附属書C.1の「適合宣言全体リスト」と附属書C.2の「一般的な証拠書類のリスト」があります。
附属書C.1の「適合宣言全体リスト」の内容は次の4点です。
・連絡先
・企業情報
・基準順守のガイドライン
・データと品質管理システムの概要
C.1の4項目目「データと品質管理システムの概要」には、リスク評価・受入れ基準・調達手順・その他文書を含める必要があります。 関連している附属書C.2の「一般的な証拠書類のリスト」は、様式A「プロセスに基づく技術文書」と様式B「製品/部品レベルの技術文書」に分かれています。「データと品質管理システムの概要」は、様式AとBのどちらか1つでも、両方を組み合わせてもよいとされています。 この内容はEUの「RoHS Enforcement
Guidance Document Version 1 – issued May 2006」5)と同一です。
5.認証取得と認証マークの表示
工業省傘下の政府機関である Thailand Industrial Standards Institute(タイ王国工業規格局TISI)がTIS規格を管轄しています。 そしてTISI だけが、 TIS規格の認証を与える権限を持っています。4)
タイに輸出する製品に認証を取得するためには、必要書類をTISIに提出して、製品審査に合格して、認証を受領します。 登録検査機関のリスト6) や必要な申請書書式7) はTISIのWebサイトからダウンロードすることができます。4)
なお、日タイ経済連携協定 8) で、電気製品に関し、輸入国において必要な適合性評価手続が、輸出国において実施できることを相互承認しています。
6.タイWEEE法案は制定のためのパブコメまで進んでいます
2021年4月23日から1か月間、タイ天然資源環境省公害管理局(PCD: Pollution Control Department)が廃電気電子機器(E-waste)の適正管理のために策定したWEEE法案の意見募集 9)をしました。 電気・電子機器にとってRoHS法と並ぶ法律なので、こちらも注視してください。
1)タイRoHS法のタイ工業規格 TIS 2368-2564
TISIから購入します。タイ国民やタイ企業は、
で廉価に購入できますが、外国人はメールでTISIに問い合わせと数日後に見積書が届きます。
2) タイ タイ工業規格のリストとTIS認証マーク
3) 電気用品の安全基準認証制度(タイ) 2015年3月日本貿易振興機構(ジェトロ)
4) タイ工業規格(TIS)の概要と認証マークの取得について 2018年3月日本貿易振興機構(ジェトロ)
5) EU RoHS Enforcement Guidance Document Version 1 – issued May 2006
6)TIS 2368-2551の登録検査機関のリスト タイ王国工業規格局TISI
7)規格名 :工業製品規格法 B.E. 2511 (1968) に基づく許可申請書式
8)日タイ経済連携協定(外務省)
9)タイ国廃電気電子機器製品の管理に関する法律(草案)パブコメ募集
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