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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

Q623.EU RoHS指令適合品の購入基準に関するDNOP、DINP、DIOPの取り扱いについて

2022年07月22日更新

【質問】

EU RoHS指令適合品の購入基準を検討しています。 フタル酸エステル類の非含有証明はDEHP、BBP、DBP、DIDPだけでよいのでしょうか。 公定法のIEC62321-8のDNOP、DINP、DIOPを含める必要があるでしょうか。

 

【回答】

EU RoHS指令適合品の購入基準であれば、フタル酸エステル類の非含有証明は、DEHP、BBP、DBP、DIDPで、DNOP、DINP、DIOPを含める必要はありません。


EU RoHS指令の制限物質として、フタル酸エステル類の4物質、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)の1種類または任意の組み合わせで構成部品、材料の均質物質単位で0.1重量%以上含有するものは、2020年7月22日からは体外医療機器を含む医療機器、工業用監視・制御機器を含む監視・制御機器も含めて上市が制限されています。

フタル酸エステルはC、H、Oの3元素で構成される有機物質で、他のRoHS指令の制限物質でスクリーニング手法として有効な蛍光X線のような簡便な非破壊では分析はできません。 このため、国際電気標準会議(IEC)はDEHP、BBP、DBP、DIDPの4種のフタル酸エステルの分析方法として、IEC62321-8を発行しています。

IEC62321-8 には、熱抽出装置(Py-GC/MS)を用いたGC/MSによる半定量分析とソックスレー抽出または再沈殿によってフタル酸エステルを抽出してGC/MSによる定量分析の2つの方法があります。

熱抽出装置を用いたGC/MSは、分析物が入ったサンプルカップを高温に保った加熱炉に落下させ、さらに昇温することで分析物を加熱、気化し、気化したフタル酸エステルをGC/MS分析する方法です。加熱炉の温度に設定によって、フタル酸エステルを分解せずに気化して分析します。

定量分析のソックスレー抽出-GC/MSは、まずは試料を凍結粉砕機等で粉末にし、溶媒に溶かしたものを、ソックスレーを用いて、フタル酸エステルを濃縮・抽出して、その抽出液をGC/MSで分析する方法で、再沈殿-GC/MSは試料を凍結粉砕機等で粉末にし、溶媒に溶かしたものに貧溶媒を添加することで沈殿物を析出してフタル酸エステルが溶解している上澄み液をGC/MSで分析する方法です。

この公定法のIEC62321-8の対象となるフタル酸エステルは、DEHP、BBP、DBP、DIDPの4物質以外に、質問のフタル酸ジニオクチル(DNOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)およびフタル酸ジイソオクチル(DIOP)の3物質を加えた7物質です。 しかし、RoHS指令での規制対象は、DEHP、BBP、DBP、DIDPの4物質となっており、この4物質が含有証明の対象となります。

なお、DNOP、DINP、DIOPの3物質に関しては、欧州指令2005/84/EC1)で口に入るおもちゃおよび育児用品が対象で、3物質の合計が0.1重量%を超える成形品を規制していますので、用途として対象となる場合はDNOP、DINP、DIOPの3物質を含める必要があります。


1) 欧州議会及び理事会指令 2005/84/EC

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