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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

Q630.スイスへの化学品(混合物)の輸出について

2022年07月29日更新

【質問】

スイスの商社に化学品(混合物)を輸出します。 EU REACHと同じ対応でよいでしょうか。

 

【回答】

スイスはEUに加盟していないため、化学品にも独自の規制がありますが、段階的にEUの規則(REACH規則、CLP規則など)に調和させる内容に改訂されています。 物質の登録手続きなどを除き、EU規則とほぼ同等になっていましたが、2022年の改訂で新規物質の登録も統合されることになりました。 その概要を以下に説明します。


【スイスの化学品に関する規制】

スイスの化学品規制は、独自の「毒物法」、「環境保護法」の下に管理されていましたが、2000年12月にEUの法制に調和させるために「化学品法(Federal Act on Protection against Dangerous Substances and Preparations: Chemicals Act, ChemA)」1) が制定公布され2005年8月に発効されました。 この法規は、新規化学物質の届出、既存物質の報告、分類・表示・包装、製品登録簿などの制度を包括的に取り決めたものですが、後から発効されたREACH規則やCLP規則への調和が課題でした。 その中で「化学品法」の下位法規の「化学品政令(Ordinance on Protection against Dangerous Substances and Preparations : Chemicals Ordinance, ChemO)」2) が2015年6月に制定され、REACH規制やCLP規制への調和がなされました。 同政令ではREACH規則と同じく、ばく露シナリオや安全データシートの作成義務や、CLP規則に沿った分類、包装、表示の義務が定められています。 また、特定物質の制限については、「化学物質軽減条例(Ordinance on the Reduction of Risks relating to the Use of Certain Particularly Dangerous Substances, Preparations and Articles: Chemical Risk Reduction Ordinance, ORRChem)」3) で禁止物質が指定されています。 同条例の附属書に個々の特定物質に対しての規定が記載されています。 附属書1-10では、発がん性物質、変異原性物質、生殖に有害な物質についてREACH規則(附属書ⅩⅦなど)を参考に規定しています。


更に、2021年5月にスイス連邦公衆衛生局は、WTOに「化学品政令」の改訂を行うと通知し、2022年2月に採択され、2022年8月に発効される予定です(参考資料2)から2022年5月1日版または5月5日版の政令にアクセスして参照ください)。 新法規により既存物質の定義が、EINECS(欧州既存市販化学物質名録)に記載されている物質から、REACH規則に従い登録された物質に変更になりました。 これにより、今までスイスに化学物質を輸出する企業が新規物質(EINECSに収載されていない物質)のみ申告すれば、スイス市場に進出することができましたが、化学品の申告範囲は新規物質からREACH規則で未登録のすべての化学品になりました。 また、REACH規則の付属書IVとVの免除条項は依然として適用されます。これにより、スイスの化学品規制がREACH規則と全面的に統合されることになります。


また、同政令の第10条aに表示やラベルの公用語は、ドイツ語、フランス語、イタリア語と定められています。


【REACH登録品のスイスでの再登録不要の要件】

上記により、REACH規則で登録された化学品は、スイスで再度登録する必要がなくなります。 但し、REACH規則で登録された物質でも、以下の条件を満たす必要があります。


1) 生産・輸入トン数がREACH規則での登録の上限を超えてはならない。

2) REACH規則 で登録された中間体で、生理化学、毒性学及び生態毒性学の関連データがないものは、スイスでは中間体としてのみ使用が可能となる。

3) REACH規則での免除条件を満たしていない場合、REACH規則で登録のトン数を超えてはならない。


1) Chemicals Act  ChemA


2) Chemicals Ordinance ChemO


3) Chemical Risk Reduction on Ordinance ORRChem

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