2024年12月31日更新
【質問】
米国TSCAにおけるPBTの改正案についてまだ確定はしていないのですが内容的にはほぼ確定として検討、対応を始めてもよいでしょうか。
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【回答】
2021年のTSCA第6条(h)におけるPBT物質の規則は、DecaBDEとPIP(3:1)に関する改正案が検討、協議されていましたが、2024年11月19日付けの官報「89FR91486」1) で最終規則として公布されました。この最終規則は、2025年1月21日から施行されます。また、PIP(3:1)を用いた成形品の義務の適用は2024年10月31日まで延期されていましたが、更に延長されることなく適用されることになりました。これにより禁止除外項目や、段階的な遵守期限延長が決められている事項以外は、禁止事項が適用されることになります。
これまでの経緯と規則改正の概要について、以下に解説します。
【改正の経緯】
2021年1月に5種のPBT物質(DecaBDE、PIP(3:1)、2,4,6-TTBP、PCTP、HCBD)に関する規則(Title40 ChapterⅠ SubchapterR Part751 SubpartE)が公布されましたが、PIP(3:1)に関して関係業界から既存のサプライチェーンに大きな影響があるとの多数の意見・情報がありました。これを受けてEPAは、規則の遵守期日(Compliance Date)を延長(2023年3月まで延長、その後2024年10月まで再延長)していました。
この遵守期日延長の際に、PIP(3:1)以外の4つの物質も含めて、規則の改訂を検討することになり、PIP(3:1)と同様に見直し要望が多数あったDecaBDEと併せて2つのPBT規則に関する改正案が、2023年11月に提案されました。この改正案はパブコメでの意見聴取や検討を経て、最終規則として2024年10月に公表され 2)、2024年11月19日に官報で公布されました。
【改正の概要】
PIP(3:1)とDecaBDE に関する規則の主な改正点は以下のとおりです。
1. PIP(3:1)規則(§751.407)改正の概要
(1)PIP(3:1)製造・加工中のPPE(Personal Protective Equipment:個人用保護具)装着義務化
(2)シアノアクリレート接着剤製造のための中間加工助剤としての PIP (3:1) および PIP (3:1) 含有製品の加工で技術的管理を要求
(3)既存の適用除外範囲変更、禁止段階的導入日追加、適用除外追加(以下の項目など)
・潤滑剤およびグリース
・自動車用部品(新車用及び交換用)
・航空宇宙車両用部品(新車用及び交換用)
・連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法で承認された海洋防汚コーティング製品
・半導体産業を含む新しい製造装置の部品
・回路基板およびワイヤハーネス
(4)記録保管期間を延長(3年から5年に)、および記録を利用可能にする期間(30日間)を削除
2.DecaBDE規則(§751.405)改正の概要
(1)既存のプラスチック輸送パレットにDecaBDE含有を示すラベル貼付
(2)DecaBDEを含む特定の活動にPPE装着を義務化
(3)原子力発電施設で使用するDecaBDE含有ワイヤーおよびケーブル絶縁体の加工・流通に対する適用延長を再延長
(4)DecaBDEを含む原子力発電施設用電線・ケーブルの輸出届出を義務化
(5)製造、加工、流通の際の水への放出禁止
(6)記録保管期間を延長(3年から5年に)、および記録を利用可能にする期間(30日間)を削除
なお、他の3つのPBT物質(2,4,6-TTBP、PCTP、HCBD)に関しての規則(§751.409、§751.411、§751.413)は変更がありません。
【参考資料】
1) 連邦官報89FR91486:
2) EPA Webサイト
Persistent, Bioaccumulative, and Toxic (PBT) Chemicals under TSCA Section 6(h)