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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

Q700.EUの化学物質規制におけるグループ化評価の動向について

2024年10月28日更新

【質問】

EUでは、近年、PFASなど同種の化学物質をグループ化して規制を検討する動きがあるかと思います。今後もその動きは強くなっていくのでしょうか?

_________________________________________


【回答】

EUが導入しているグループ化検討は、登録物質のリスク管理または新たなデータ生成を効率的に進められることが確認されているため、今後もその動きは継続していくものと考えられます。


◆グループ化評価について(*1)

グループ化評価は規制措置が必要な化学物質の特定を迅速に行うために、ECHAが単一の物質としてではなく、構造的に関連する物質のグループに対処することをいいます。このグループ化評価については個別の物質評価と比較して、以下の利点があると考えられています。


・類似物質に対する規制措置に一貫性をもたせることが可能。

・規制措置が必要な物質とそれ以上の措置が必要ない物質をより迅速に特定することが可能。

・無駄な動物実験を回避し、利用可能なすべてのデータを使用することが可能。


また、場合によっては、類似の技術機能や用途(難燃剤など)を中心にグループ化したり、懸念する特定の成分をグループ化したりするなども考慮されることがあります。グループ化は検討するにあたり中心となる物質を特定し、ECHAのITツールを使用して、中心とする物質と構造的に類似している他の物質を特定していきます。この作業は最終的に規制措置が必要になる可能性のある物質をグループ化するための出発点を提供し、登録物質に対処するために当局が行う作業をスピードアップする目的に利用されます。

 

◆グループ化評価の効果

2015年にEUが策定した「統合規制戦略」は、それまでの法規制で得られた知見を基づいて、さまざまな規制プロセスをまとめたものになります。この戦略は、法規制の目的を達成するために明確で一貫性のある基盤を提供し、化学品に関するデータ作成、懸念物質群の特定、規制リスク管理(RRM)活動の進展を加速させることを目指しています。


また、ECHAは、2027年までにすべての登録物質にリスク管理または新たなデータ生成の優先順位を付けることを目標としています。この目標に関しては従来の個別物質ごとの評価では間に合わない可能性が懸念されていました。こうした状況の中、ECHAは2019年にグループ化評価を導入し、2022年6月には「統合規制戦略年次報告書第4版」(*2)を公表しています。この報告書では「グループ評価」が着実に成果をあげ、2020年度比(2020年度は2019年度比約10倍)で30%ほど増加して1,900以上の物質の評価が完了したことが記載されています。その内容の詳細は本コラムでご紹介していますのでご参照ください(*3)。さらに、2023年7月に公表された統合規制戦略年次報告書(Speeding up the identification of chemicals of concern)(*4)においても、2022年にグループ評価作業は高いペースで継続され、「未評価エリア」に分類される物質が大幅に減少し、約2,000の物質からなる 61のグループについて、規制の必要性の評価が開始されたことが確認できます。


なお、ECHAの今後の戦略を示す「ECHA – Strategy Statement 2024-2028」(*5)においても、物質及び物質グループで評価をすすめることが記載されています。

以上のことから2027年の優先順位付け目標に向けてグループ化評価はEU域内における物質評価方法として、今後も重要な役割を果たしていくものと考えられます。


(*1)グループ化作業

(*2)統合規制戦略年次報告書第4版

(*3) EU 統合規制戦略年次報告書第4版について(2021年度化学物質のグループ評価結果報告)

(*4) 統合規制戦略年次報告書(Speeding up the identification of chemicals of concern)

(*5) ECHA – Strategy Statement 2024-2028

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