2024年10月11日更新
【質問】
EUでマイクロプラスチックが制限物質として規制されていると聞きました。この場合のマイクロプラスチックはどのような定義がされているのでしょうか。
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【回答】
2023年9月25日のEU官報で、REACH規則附属書ⅩⅦの制限対象物質に「合成ポリマー微粒子(Synthetic polymer microparticles)」をEntry78として追加したと告示されました 1)。これは意図的に添加されたマイクロプラスチックの使用に規制をかけるものです。ここで規定された対象物質(マイクロプラスチック)の定義や規制から除外されるもの、制限の条件などにつき、以下に回答します。
1. 制限対象となるマイクロプラスチックの定義
「合成ポリマー微粒子(Synthetic polymer microparticles)」が附属書ⅩⅦに追加されました。これは固体のポリマーで以下の両方の条件を満たすものと定義づけられています。
(a) 粒子中に含まれ、その粒子の少なくとも1重量%を構成する。
または、ポリマーで表面コーティングされている粒子も含む。
(b) 上記(a)で言及される粒子の少なくとも1重量%が以下のいずれかの条件をみたす。
(ⅰ)粒子のすべての寸法が5㎜以下である。
(ⅱ)粒子の長さが15㎜以下であり、長さと直径の比が3より大きい。
なお、ここで言う「粒子」は、明確な物理的境界を持つ単一の分子以外の微細な物質片を意味します。
2.除外されるポリマー
前項の定義に当てはまったとしても、以下のポリマーは規制から除外されます。
(a) 自然界で行われた重合プロセスの結果であるポリマーで、それらが抽出されたプロセスと関係なく化学的に変性された物質でないもの
(b) Appedix15に従って検証された分解可能なポリマー
(c) Appedix16に従って検証された、溶解度が2g/Lを超えるポリマー
(d) 化学構造中に炭素原子を含まないポリマー
3.定義に当てはまった場合の制限条件
附属書ⅩⅦ Entry78の「Conditions of restriction」欄の1項と3項に、制限の条件として以下が定められています。
合成ポリマー微粒子が、単体として、または製品特性を実現するために0.01 重量%以上の濃度で混合物中に存在する状態で、市場に出してはならない。ただし、対象とする合成ポリマー微粒子の濃度が、利用可能な分析方法または添付文書によって決定できない場合、以下に記述のサイズ以上の粒子のみを考慮して濃度限界の適合を検討する。
(a) すべての寸法が5mm以下の粒子の場合は、任意の寸法において
0.1μmの粒子
(b)長さが15mm以下で長さと直径の比が3以上の粒子の場合は、長さが
0.3μmの粒子
4項で、1項は以下の製品の上市には適用されないとしています。
(a) それ自体または混合物として工業現場で使用される合成ポリマー微粒子
(b) 指令2001/83/ECの範囲内の医薬品、および規則(EU)2019/6の範囲内の動物用医薬品
(c) 欧州議会および理事会規則(EU) 2019/1009の範囲内の肥料製品
(d) 欧州議会および理事会規則(EC) No 1333/2008の範囲内の食品添加物
(e) 欧州議会および理事会規則(EU)2017/746の範囲内の機器を含む体外診断用機器
(f) 上記(d)に該当しない、規則(EC)No 178/2002の第2条に定義される食品、および同規則の第3条(4)に定義される飼料
5項では、以下の合成ポリマー微粒子を単独または混合物として上市する場合には制限が適用されない、とされています。
(a) 通常の使用用途において使用説明書に従って使用された場合、環境への放出が防止されるよう、技術的手段で封じ込められた合成ポリマー微粒子
(b) 合成ポリマー微粒子の物理的性質が、本規制に含まれないような状態に恒久的に改変されるもの
(c) 最終用途までに固形物の中に恒久的に組み込まれる合成ポリマー微粒子
6項には、上記制限が適用される用途(適用用途)として、人工芝用粒状充填剤、角質除去などの目的で添加される化粧品や洗剤、柔軟剤などが規定され、それぞれに規制が開始される時期が定められています。
また、7項から15項には情報提供義務が定められています。
【参考資料】
1) COMMISSION REGULATION (EU) 2023/2055 of 25 September 2023
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