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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q694.新たに追加されたCLS(Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxide)の用途について

2024年08月15日更新

【質問】

2024年6月27日に追加されたCLS(Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxide)はどのような製品で使用されているのでしょうか。

_________________________________________


【回答】

ご質問のBis(α,α-dimethylbenzyl) peroxideは、2つのジメチルベンジル構造が2つの酸素で結合した過酸化物です。この構造により、2つの酸素間が開裂し、ラジカルが発生しやすいという性質を持ちます。産業用途ではこのような性質を利用してポリマー合成時の重合開始剤、架橋剤、加熱形成用硬化剤、難燃助剤などに添加して使用されます。

例えば、重合開始剤や難燃助剤としてはプラスチック材料や木工材料の製造、架橋剤としてはゴム製品の製造に使用されており、最終製品として木工製品 (床、家具、おもちゃなど)やセラミック製品(皿、鍋/フライパン、食品保存容器、建設資材、絶縁材料など) 、プラスチック製品(食品の包装、玩具)などになります。REACH規則の登録情報によると製造および輸入による使用量は1,000~10,000トンの範囲となっています(*1)。


このような状況の中、Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxideは、2024年6月27日にCLSに追加されました(*2)。

なお、この追加により現時点(2024年8月5日)のCLSは241物質となりました。


◆Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxideの有害性

Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxideの有害性については、2017年にノルウェーから提案され、2018年にリスク評価委員会(RAC)にて分類が採択されています(*3)。採択された分類はCLP規則における生殖毒性危険クラス1B(H360D:「胎児に害を及ぼす可能性がある」)であり、分類においてREACH規則第57条(c)に基づく生殖毒性カテゴリー1Aまたは1Bという基準を満たしています。今回のCLSへの追加もこの分類結果に基づいて判断されています。


◆企業の対応について

前述の通り、Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxideが新たにCLSに追加されたことにより、該当物質を使用するまたは含有する製品を取り扱う企業には法規制対応が求められます。REACH規則などに基づく主な対応は以下となります。


製品に0.1%(重量重量)を超える濃度の候補リスト物質が含まれている場合、供給者は、その物質を安全に使用する方法について、顧客や消費者に情報を提供する必要があります。成形品の輸入業者および生産者は、その成形品がリストに掲載された日から6ヶ月以内に、その成形品に候補リストの物質が含まれている場合、欧州化学品庁(ECHA)に通知を行う必要があります。今回のBis(α,α-dimethylbenzyl) peroxideの場合、起点となる日付は2024年6月27日となります。

また、顧客に提供する安全データシート(SDS)についても適宜更新する必要があります。

廃棄物枠組み指令においては、0.1%(重量比)を超える濃度でCLSが含まれている場合、ECHAに通知が必要となり、SCIPデータベースに登録することになります。

CLSへの新たな追加は継続的に行われ、企業対応が求められる内容であるため、その動向については注意しておく必要があると考えられます。


(*1)REACH登録データ:Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxide


(*2)ECHAはCLSに1つの物質を追加(2024年6月27日)


(*3) Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxide :EUレベルでの統一された分類と表示を提案


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