2021年05月21日更新
【質問】
当社は中国企業に電気電子機器に組み込むユニットを輸出しています。 GB30981-2020に適合した塗料を使用しなくてはならないでしょうか。
【回答】
日本国内で塗装した製品については、基本的にはGB30981-20201)の対象外です。 これは、このGB(国家標準)がVOC(揮発性有機化合物)を規制することにより、中国国内の大気汚染を防止することを主たる目的としたものだからです。 規制の対象は塗料であり、適合しない塗料は中国国内で生産、輸入、販売、使用できません。 しかし、塗装された製品が輸入される場合には、基本的には用いられる塗料がこのGBに従う義務はありません。 「基本的には」としたのは、このGBに「その他の有害物質含有量制限要求」が示されており、その中で重金属含有量が塗装後の含有量で定義されているため、解釈が微妙なためです。以下にこのGBの策定経緯と重金属含有量に関する内容について解説します。
中国では深刻な大気汚染を抑制するために、2018年に「青空を守る戦い3年行動計画」が通知され、その中の第8項目で、「2019年末までに、コーティング、インク、接着剤、洗浄剤、およびその他の製品のVOC含有量制限に関する必須の国内基準の策定を完了し、2020年7月1日から主要な領域で主導的にそれらを実施する。」としています。 これに基づき、国家市場監督管理総局(SAMR)および国家標準化管理委員会は、VOCの制限に関する以下の9つの国内基準を改訂・策定しました。
GB 38468-2019 室内フロア塗料中の有害物質含有限度 (新規)
GB 38469-2019 船舶塗料中の有害物質含有限度 (新規)
GB 18581-2020 木材塗料中の有害物質含有限度 (GB 18581-2009、GB24410-2009の代替)
GB 18582-2020 建築用壁塗料中の有害物質含有限度(GB 18582-2008、GB24408-2009の代替)
GB 24409-2020 車両塗料中の有害物質含有限度(GB 24409-2009の代替)
GB 30981-2020 工業用保護塗料中の有害物質含有限(GB30981-2014の代替)
GB33372-2020 接着剤中の揮発性有機化合物の含有限度(GB/T 33372-2016の代替)
GB38508-2020 洗浄剤中の揮発性有機化合物の含有限度 (新規)
GB38507-2020 インク中の揮発性有機化合物の含有限度 (新規)
国家標準(GB)には強制標準と推奨標準がありますが、VOCの制限に関する9件の国家標準は強制標準です。 中華人民共和国標準化法2)の第3章25条では「強制標準を満たさない製品及びサービスは、製造、販売、輸入、または提供してはならない」となっています。
GB30981-2020(工業用保護塗料の有害物質の制限量)では、塗料を使用分野、下塗、中塗、上塗などの用途、水性/油性などに区分して基準が示されています。 この使用分野の中に「電子電気」という製品カテゴリがあり、水性塗料では用途によらずVOC制限値は420g/L以下、溶剤系塗料では下塗り塗料で600g/L、カラーラッカーで700g/L以下、ワニスで650g/L以下となっています。 これらはあくまでも塗料としての含有量ですので、日本で塗装したものについては適用対象外となります。
このGBは「有害物質の制限量」とあるように、VOC以外に「その他の有害物質含有量制限要求」も示しています。 その中で重金属(鉛、水銀、六価クロム、カドミウム)については、制限値として、鉛、六価クロム、水銀は1000mg/kg以下、カドミウムは100mg/kg以下としていますが、これらは「製品で明示した施工状態」となっています。 これらは、2014年版では「推薦性」でしたが「強制性」に変更されました。 塗装後の含有量で規制されていますので、この制限値を超えた場合に輸入品であっても摘発されないとは断言できません。 ただ、この制限値は中国RoHSと一致していますので、これを遵守していれば問題ないことになります。
1)GB30981-2020 WTO通報版(*注:原本と異なる箇所があります。本文は原本を参照して記述しています)
2)中華人民共和国標準化法 JETRO和訳版
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