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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

EUのユニバーサルPFAS規制案の検討状況について

  • 執筆者の写真: tkk-lab
    tkk-lab
  • 2024年4月5日
  • 読了時間: 4分

2024年04月05日更新

EU加盟5か国(ドイツ・デンマーク・オランダ・ノルウェー・スウェーデン)は2023年2月に有機フッ素化合物(PFAS)規制案を公表しました(*1)。 この規制案に関連するPFASは、物質の構造で定義する包括的で広範な物質が対象物質となることから、ユニバーサルPFASとも呼ばれています。 PFAS類は炭素-フッ素の結合エネルギーが高いことなどによるユニークな機能を示し、様々な分野に使用されています。 こうした事情からユニバーサルPFAS規制案の産業界への影響は大きいとされ、その動向については利害関係者からもいつ頃から規制されるのか?最終的にどのような規制内容になるのか?という声も多く聞こえてきます。 こうした状況の中、欧州化学品庁(ECHA)から今後のスケジュールに関する公表されましたので、以下にご紹介します。


◆公表されたスケジュール

ECHAは2024年3月13日にPFAS規制提案の次のステップとして以下のスケジュールを公表しました(*2)。


2024年3月の会合:

消費者向け混合物、化粧品、スキーワックス

PFASの危険性(リスク評価委員会(RAC)のみ)。

一般的アプローチ(社会経済分析委員会(SEAC)のみ)。


2024年6月の会合:

金属めっきおよび金属製品の製造。

ハザードに関する追加議論(RACのみ)。


2024年9月の会合:

繊維製品、椅子張り、皮革、アパレル、カーペット(TULAC);

食品接触材料と包装

石油および鉱業。


PFAS規制案はREACH規則の制限による規制となります。 REACH規則における制限は、以下の(A)~(D)の順番で検討が進んでいきます。現状は2023年9月にパブリックコメントの期間が終了しており、(C)のRAC、SEACによる最終意見のとりまとめの段階です。 RACとSEACでは2023年6月の会合からPFAS規制案を取り上げており、セクターごとに意見とその評価を実施していくアプローチをとっています。 例えば、食品接触材料および包装のセクターについては、2023年9月の会合で最初の意見草案について合意しています。 したがって、2024年9月に予定されている会合では、最初の意見草案を踏まえた評価結果について議論されるものと思われます。


REACH規則(制限)の検討ステップ

(A)制限案提出

(B)制限案に対するパブリックコメント

(C)リスク評価委員会(RAC)、社会経済分析委員会(SEAC)による最終意見のとりまとめ

(D)欧州委員会による採択

REACH規則の規定では最終意見のとりまとめについてRACにおいて提案日から9ヵ月、SEACにおいては12ヵ月以内にその内容を欧州委員会へ表明することになっています(第70条、第71条)。 また、期間内に意見の表明が困難な場合、その旨を通知することになっています(第72条)。 こうした規定により想定されるスケジュールとして2024年中にRAC、SEACの意見が取りまとめられ、2025年に欧州委員会による採択(発効から18ヵ月後に適用)の可能性も想定されていました。


今回、公表されたスケジュールによると2024年9月の段階で必要な全てのセクターが論議されないものと思われ、最初の意見草案を受けた調査結果を受けた議論についても食品接触材料および包装のセクターにとどまると予想されます。 また、2023年11月に開催されたRACの議事録(RAC-67)(*3)では、意見提出期限を延長することを欧州委員会へ通知した旨が記載されています。 以上のことから、REACH規則の規定(第70条、第71条)に基づくスケジュールからは遅延していく可能性が高いといえそうです。


残りのセクターの評価に関する委員会の計画や、次の手続きステップに関する詳細は、作業の進捗に応じて発表され、こうした情報は、各委員会の会合に合わせて通知されるとしていますので、利害関係者は今後、公表される次のスケジュールについて引き続き注視していく必要がありそうです。


◆最後に

今回取り上げたEUのユニバーサルPFAS規制案は、パブリックコメントにおいて5642件のコメントがよせられ、その注目度の高さがうかがえます。 RAC、SEACによる最終意見のとりまとめは規制案が対象物質や対象分野が広範囲におよぶことに加え、よせられたコメントも加味していく必要があるため、検討作業は慎重に進められるものと考えられます。


(*1)ECHA PFAS類の制限提案


(*2) PFAS規制提案の次のステップ


(*3)議事録(RAC-67)


(長野 知広)

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