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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

洗剤及び界面活性剤の規則の改正・廃止案に関する動向

2023年09月01日更新

欧州経済社会評議会(EESC)は、従来の「洗剤および界面活性剤に関する規則:(EC) No 648/2004」(以降:洗剤規則)の廃止と、「輸入品を含む製品の安全性および市場監視の強化に関する規則:(EU) 2019/1020」の改正に関する「洗剤および界面活性剤に関する欧州議会および理事会規則の提案:COM(2023) 217 final - 2023/0124 (COD)」1)(以降:洗剤規則改正案)の意見書2)を公表しました。 その内容を以下に説明します。


1.洗剤規則改正案について

洗剤規則は2004年3月から施行されてきましたが、「CLP規則:(EU)1272/2008」との重複による過重表示、ラベルでの情報伝達には簡素化の余地があることや、「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR):COM(2022) 142 final」等の他の法律や技術的な進展との一貫性と整合性を確保することが重要となってきたため、洗剤規則改正案1)が検討されてきました。 以降はその中でも関係者の関心が高いデジタル表示関係の要件に着目し、その主な改正内容を説明します。


(1) 製造事業者の義務(第7条)

 製造事業者は附属書IVに従い、適合性評価手順(規則(EC)No 768/2008/ECで規定しているモジュールA:内部生産管理)を実施し、技術文書を作成しなければなりません。その際には以下のことが要求されます。

 (a) 製品パスポートを作成する。(第18条に従う)

 (b) 製品パスポートのデータキャリア(バーコード、QRコード、その他の自動読み取りできるもの。)を製品のラベル又は包装に見やすく読みやすい方法で、印刷又はその他の方法で掲示する。(第18条に従う)

 (c) CE マーキングを掲示する。(第14条に従う)

 (d) 上市する前に登録簿に製品パスポートを登録する。(第20条に従う)

 なお、技術文書と製品パスポートは10年保管の必要があります。


(2)認定代理人(第8条)

製造事業者は委任状により認定代理人(EU域内に拠点を置き、EU整合法令の下、製造事業者が負う義務に関して、製造事業者に代わってその義務を遂行するよう、製造事業者の委任状を受けた自然人もしくは法人)を指定することができます。 製造事業者がEU域内に存在しない場合は、製造事業者が委任状により認定代理人を指定することでのみEU域内に上市できることになります。(従来は製造事業者がEU域内に設立されていることが義務付けられていました。)


(3) CEマーキングの掲示に関する規定と条件(第14条)

適合性評価手順(規則(EC) No 765/2008)第30条に定める一般原則に従わなければなりません。


(4) 一般的なラベリング要件(第15条、第16条)

製品には附属書Vに準じたラベルを掲示しなければなりません。また物理的ラベル又はデジタルラベルにアクセスできるデータキャリアを掲示しなければなりません。


(5) デジタルラベリングの要件(第17条)

デジタルラベル情報は、データキャリアを介しアクセス可能であること等が規定されています。


(6) 製品パスポート(第18条、第19条)

第18条、第19条及び附属書IVの要件を満たした製品パスポートを作成しなければなりません。 製品パスポートは、前記のデジタルラベルと同じデータキャリアを介してアクセスするものなので、ESPRの下で導入される製品パスポートと相互運用可能である必要があります。 また、製品の生産ロット毎に製品パスポートを作成しなければなりません。


(7) 製品パスポート登録(第20条)

製品を上市する前に、ESPRに基づき設立された登録簿に固有の製品識別子と固有の事業者識別子を登録しなければなりません。


2.EESCの意見書の主な内容

EESCの意見書の主な内容を以下に説明します。


1)製品パスポートとCEマーキングの付加価値について、更に明確にするように求めています。これは、CEマーキングの不正は一般消費者の安全を脅かし、適合する経済事業者の公平な競争条件を損なう可能性があるとのEESCの考えに基づくものです。


2)経済事業者(特に中小企業)の要件を簡素化することは支持するが、経済事業者の役割と義務、特に第8条に記載されている認定代理人について、さらなる明確化が必要であると考えるとしています。


3)製品パスポートをESPRなどの他の法律で採用されているものと完全に統一化するよう求めています。 これは、経済事業者(特に中小企業)及び公的機関の事務負担を最小限に抑えるためには、一貫性を維持し、重複する要件を避けることが重要であるとのEESCの考えに基づくものです。

また、製造事業者が十分な準備時間を確保できるよう、関連するCLP規則やESPRなどの追加法が採択された後に、経過措置期間を開始するよう求めています。


4) ラベルの内容を簡素化してデジタルラベルを効果的に利用することにより、製品ラベルの明瞭さと読みやすさを改善することは支持するとしています。 また、ラベルに関して文字の代わりにピクトグラムやアイコンを使用して、ラベルをより分かりやすく表示することを提案しています。


5) ラベルの情報を最小限に抑えるため、単一のデータキャリアを通じてデジタルラベルと製品パスポート情報の両方にアクセスすることは支持するとしています。


6)製品の生産ロット毎に製品パスポートを作成し通知する義務は過度な負担であると考え、製品パスポートの更新のタイミングについて見直すことを求めています。


3.今後の動向

今後、EESCの意見書を受けて洗剤規則改正案がどのように修正・法案化となるか注目されます。 また、「デジタルラベリング」、「製品パスポート」は、今後、EU市場に上市する製造事業者の必須条件となり、対応が必要となることが予想されます。


[出典]

1)


2)


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