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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

近年のミネソタ州法における含有物質規制の動向について

2024年07月05日更新

米国では、有害化学物質の規制に関してTSCAなど連邦法で規制されていることは多く知られていますが、各州法においてもさまざまな規制が行われています。今回のコラムでは、近年施行されたミネソタ州の含有物質規制法のうち、消費者製品中の鉛およびカドミウムの含有禁止法と意図的なPFAS含有製品の禁止法をご紹介します。


1.消費者製品中の鉛およびカドミウムの含有禁止法(§325E.3892) 1)

ミネソタ州では、調査した一部の安価な玩具やジュエリーに規制限度を大幅に上回る鉛とカドミウムが含有していることが明らかになったことにより、子供が家庭で触れる可能性のある玩具、ジュエリー、その他の消費財における鉛とカドミウム含有量の規制を強化する必要性が示唆されました。


こうして2023年7月1日に発効した消費者製品中の鉛およびカドミウムの含有禁止法では、個人または企業が、総重量の 0.009% (90 ppm) を超える鉛、または総重量の 0.0075% (75 ppm) を超えるカドミウムを含む以下のカテゴリーの製品を輸入、製造、販売、販売用に保管、配布、または提供することが禁止されています。そのカテゴリーのリストには以下が含まれます。禁止事項が連邦法によって優先される場合、鉛またはカドミウムを含む対象製品には適用されません。ただし、連邦法の制限値よりも州の制限値を厳しくできないことが明記された連邦法のみが考慮されます。


(1)ジュエリー

(2)玩具

(3)化粧品およびパーソナルケア製品

(4)パズル、ボードゲーム、カードゲーム、その他これらに類するゲーム

(5)遊具

(6)屋外ゲーム

(7)学用品

(8)鍋、フライパン

(9)カップ、ボウル、その他の食品用容器

(10)工芸用品およびアクセサリー製作用品

(11)チョーク、クレヨン、絵の具、その他の画材

(12)ハンドスピナー

(13)衣装、衣装アクセサリー、子供用および季節のパーティー用品

(14)鍵、キーホルダー、キーリング

(15)衣類、履物、帽子、アクセサリー


なお、対象となる製品が条文では詳しく定義されていなかったため、ミネソタ州汚染管理局 (MPCA) は、保健省および商務省と連携して、製造業者、小売業者、輸入業者が規制される製品を理解するのに役立つ新しいガイダンス 2)を作成しました。


このガイダンスでは、一緒に販売される製品の組み合わせまたはセット、製品と一緒に販売される付属品などは対象となる製品の範囲に含めることを推奨しています。また、製品とは別に販売される付属品であっても、その付属品が対象製品の範疇に含まれるもの(例えば人形の服は人形とは別に販売されていても玩具に分類される)についても同様に、対象となる製品の範囲に含めることを推奨しています。


2.意図的なPFAS含有製品の禁止法(§116.943) 3)

ミネソタ州では、PFAS汚染の対策として、PFAS対策計画 4)を立案し、実行しています。このなかで、PFASの不必要な使用や放出を防ぐ取り組みとして、必須でない用途における PFASの使用を制限または禁止することを明示しています。


ミネソタ州のPFAS含有規制法は、すでに2024年1月1日発効の消火泡剤(§325F.072) 5)や食品包装材(§325F.075) 6)など使用用途を限定して施行されていますが、今回の意図的なPFAS含有製品の禁止法は、すべての製品を対象とする初めての規制となります。


以下では、意図的なPFAS含有製品の禁止法の要求事項を簡潔に説明します。


2025年1月1日以降、意図的に添加されたPFASを含む製品の場合、州内で下記の製品を販売、販売の依頼、または販売のために配布することはできません。

(1)カーペットまたは敷物

(2)洗浄用品

(3)調理器具

(4)化粧品

(5)デンタルフロス

(6)生地の処理

(7)児童向け製品

(8)生理用品

(9)繊維家具類

(10)スキーワックス

(11)布張りの家具


以上の製品カテゴリーに含まれない製品においても、意図的にPFAS添加されている場合、州内で販売、販売の依頼、または配布する製造業者は、以下の情報を含む情報を管理当局に提出しなければなりません。


・製品の簡単な説明(ユニバーサル製品コード(UPC)など製品に割り当てられたその他の数値コード)

・製品構成を含む製品におけるPFASの使用目的

・製品中の化学情報サービス登録番号で特定される各PFASの量

・製造業者の名称と住所ならびに製造業者の連絡担当者の氏名、住所および電話番号

・管理当局が要求する追加情報


ただし、管理当局は、上記の製品カテゴリー以外で意図的に添加されたPFASを含む製品を、上記の禁止要件の製品カテゴリーまたは用途別に追加指定することができます。こうして追加された規制要件は、2025年1月1日以降、2032年1月1日までに発効されることが要求されています。さらに、管理当局は、意図的に添加されたPFASが含まれている場合、州の環境および天然資源を汚染または害する可能性が最も高いと判断した製品カテゴリーの販売を優先的に禁止することを要求されています。


2032年1月1日以降、管理当局が製品へのPFASの使用が避けられない使用であると判断した場合を除いて、意図的に添加されたPFASを含むすべての製品は州内で販売、販売の委託、または販売のために配布することを禁止しています。管理当局は、PFASの使用が避けられない使用であると判断した特定の製品または製品カテゴリーを指定することができます。(製品が上記の製品カテゴリーに含まれる場合を除く)


上記製品カテゴリーに使用される包装材については、製品を収納、保護、または少量に分配するために不可欠な製品包装のみが製品構成要素とみなされ、意図的に添加された PFAS に関する 2025年の禁止の対象となります。製品の陳列、販売、取り扱い、保管、配送に使用される製品包装や輸送容器は、製品構成要素とはみなされません。MPCAの本法の紹介ウェブサイト 7)では、リップクリームとクリームを充填する筒、外装のプラスチック容器の例を使って、禁止製品の範囲の判断について説明しています。


3.まとめ

今回のコラムでは、最近、発効されたミネソタ州の2つの含有物質規制法を取り上げました。消費者製品中の鉛およびカドミウムの含有禁止法は、子供の保護を目的としている規制であるいっぽうで、意図的なPFAS含有製品の禁止法は、残留性の高いPFASの汚染から環境や人間を保護することを目的としています。これらの目的の違いにより、ともに含有物質の規制であっても、規制の対象範囲や適用時期、要求内容などが異なっていることがわかります。規制目的ごとに整理することで、米国の各州法を理解する助けになると考えられます。


(柳田 覚)


1)ミネソタ州法 § 325E.3892


2)製造業者と小売業者向けのガイダンス


3)ミネソタ州法§116.943


4)ミネソタ州PFAS対策計画


5)ミネソタ州法§325F.072


6)ミネソタ州法§325F.075


7)MPCA意図的なPFAS含有製品の禁止法の紹介サイト

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